この日はソウル市内と郊外の保存車を見て回りました。
まずは地下鉄6号線の花郎台駅で下車し、「花郎台鉄道公園」に向かいます。
花郎台鉄道公園は京春線のルート変更で廃止となった花郎台駅の跡地が活用されており、駅舎やホームが保存されています。

公園に入って最初に目につく車両です。
762mmのナロー機関車ヒキ(히키)1と客車2両です。
南仁川〜水原間(水仁線)及び水原〜驪州間(水驪線)で運転されたそうです。
どちらの路線もすでに廃止され、現在韓国にナローゲージの一般鉄道は存在しません。

ミカ(미카)5の56号機です。
1952年に日本で製造されたとのことです。軸配置2-8-2のミカド式テンダー機です。1435mm軌間の機関車は大柄で迫力があります。
京釜線で運転されました。

元プラハ市電のタトラT3SUCS形です。
タトラT3はチェコのCKDタトラ社で製造された路面電車「タトラカー」の3代目モデルで、1960年から製造されました。
13991両が製造され、路面電車としては世界一の生産数だそうです。
現在も旧東側諸国で多くの車両が活躍しています。

タトラカーは米国PCCカーの技術を採用し、高加減速、低騒音が特徴です。
駆動方式は直角カルダンで、電磁吸着ブレーキが備わります。

運転台は自動車と同じペダル方式となっています。


広島電鉄900型906号です。
鉄道公園整備にあたり、広島電鉄より無償譲渡されました。

東欧と日本の路面電車が並んで展示されています。
どちらの車両とも縁のない第三国の公園で思わぬ光景が出現することになりました。

旧駅舎も保存されています。
日本統治時代の1939年の建築で、末期はソウル市内にありながら無人駅でした。

駅車内は駅の歴史や古い乗車券などが展示されています。
ソウル市内のミニ鉄道博物館と言える公園です。
ソウル特別市 蘆原区 孔陵洞(孔陵洞)
서울특별시 노원구 화랑로 608

続いて地下鉄4号線恵化駅から徒歩10分の「国立こども科学館」の保存車両です。

ソウル市電363号車です。
案内板には市電の概要が解説されていますが、車両についてのデータは無く、年式や製造メーカーは不明です。日本国内で製造されたのでしょうか?

車内です。
きれいな状態ですが、全体が茶系と白色の2色で塗装されており、現役時代の姿とは異なると思われます。

ヒョウキ(햐기)8-28号機です。
762mm軌間用の機関車で、花郎台鉄道公園のヒキ1と同じく、水仁線と水驪線で運転されました。
2両とも科学館の正門前に保存されており、入館しなくとも見学可能です。ただし科学館の閉館時には見学できないものと思われます。
国立こども科学館(국립어린이과학관)

続いて、地下鉄2号線(循環線)の新道林駅から分岐する新亭支線に乗車し、陽川区庁駅で下車しました。
循環線は10両編成でVVVF制御の新しい車両を多く見かけましたが、新亭支線は比較的古い旧2000形チョッパ制御車の6両編成で運行されていました。

陽川区庁駅を地上に上がると「新亭車両基地」が広がっています。
ずらりと並んだ電留線とその上の団地群が都営三田線の西台検車区のようです。

留置線群から見て東側のソウル・ウンジョン小学校の真下に旧型車両の顔が見えました。

ソウル市地下鉄1号線の初代車両1000形です。
旧韓国国鉄(現鉄道公社)の1000形と共通設計の交直流電車で、1974年の1号線開業に合わせて導入されました。
導入当初の編成である6両編成で保存されているそうで、反対側の先頭車は1001号車だそうです。


1号線は日本の技術支援によって建設され、1000形電車も日本国鉄によって設計されました。
103系や301系を彷彿とさせる車両ですが、前述の通り交直流車で、かつ通勤形電車としては不釣り合いとも思えるスペックの高い機器類が多く採用されており、新製費はかなり高額であったと思われます。
1000形はこの編成を含む初期の車両は日本の車両メーカーで製造されましたが、ほどなく韓国国内での生産へ切り替えられました。

中間車の一部ドアがオリジナルでないものに交換されていました。

ソウル地下鉄の旧2000形です。2号線で運用されていました。
保存されているのはトップナンバー編成のうち4両で、1980年の2号線開業に合わせて製造されました。

1000形の流れを汲む抵抗制御車で、日本の電車によく似た機器が並びます。
旧2000形はチョッパ制御にマイナーチェンジされた後期車の一部が現役で運行されていますが、初期に製造された抵抗制御車はすでに引退しています。
なお、1000形、2000形ともに「地下鉄博物館展示予定」「部品取り禁止」との貼り紙がありました。
現在韓国には地下鉄の博物館は存在しませんが、ソウル地下鉄公社には博物館を開業する計画があり、この2編成はそのために保存されているということでしょうか?
新亭車両事業所(신정차량사업소)
地下鉄2号線新亭支線の陽川区庁駅で下車、徒歩10分。①出口を上がり、歩道橋で車両基地の反対側へ渡る。
続いて、国立国立果川科学館へ行くため、首都圏電鉄果川線(地下鉄4号線と直通)の大公園駅で下車しました。

科学館の中庭に5両の車両が展示されてます。

「韓国標準型電車」の試作車です。
VVVFインバータ、ATO(自動列車運転装置)等を搭載し、都市鉄道の標準型とすべく試作された車両とのことです。
しかし訪問時は宇宙船風?に改装されていたようで、事前に他の方のサイトで予習していたのとは全く違う姿でした。

車内も大きく改装されており、3両のうち1両はカフェスペースとなっていました。

ディーゼル機関車の2101号です。
アメリカ製と思われるスタイルです。比較的小型の機関車で、入換用でしょうか?

セマウル号用客車です。装飾は剥がされたのかステンレス地剥き出しです。

Wikipedia/G43
ウィキペディアからの転載ですが、標準型試作車の本来の姿です。
それまで日本の影響が強かった地下鉄車両から脱した韓国独自の車両という点で興味深い車両です。いつか元の姿に復元してくれれば良いのですが…。
国立果川科学館(국립과천과학관)
京畿道果川市果川洞706(경기도 과천시 과천동 706)
再び4号線に乗車し、古桟駅で下車しました。

駅ホームのすぐ下に2両の気動車が保存されています。
また、車両の手前に線路が敷設されていますが、これはかつてこの場所を走っていた旧水仁線の廃線跡です。
旧水仁線は水原〜南仁川間を結んだ韓国最後のナローゲージ路線で、並行する新線の開業によって1995年に廃止となりました。(保存されている車両とは無関係です)

車両はムグンファ号用気動車の9000形(先頭車)と9100形(中間車)です。
元々普通列車に相当するトンイル号用9500・9600形として登場しましたが、トンイル号の廃止によって一部の車両が急行に相当するムグンファ号用に改造されました。
しかしムグンファ号での運用も減少傾向にあるようで、そのためこの2両も廃車になったと思われます。


先頭車の9000形はカフェに、中間車の9100形は工房として利用されていました。

せっかくなのでコーヒーとケーキをいただきました。
在来線でも標準軌の韓国の車両だけあって、鉄道車両の再利用であることを感じさせない余裕がある空間です。
(訪問:2019年10月)
〜続きます〜
まずは地下鉄6号線の花郎台駅で下車し、「花郎台鉄道公園」に向かいます。
花郎台鉄道公園は京春線のルート変更で廃止となった花郎台駅の跡地が活用されており、駅舎やホームが保存されています。

公園に入って最初に目につく車両です。
762mmのナロー機関車ヒキ(히키)1と客車2両です。
南仁川〜水原間(水仁線)及び水原〜驪州間(水驪線)で運転されたそうです。
どちらの路線もすでに廃止され、現在韓国にナローゲージの一般鉄道は存在しません。

ミカ(미카)5の56号機です。
1952年に日本で製造されたとのことです。軸配置2-8-2のミカド式テンダー機です。1435mm軌間の機関車は大柄で迫力があります。
京釜線で運転されました。

元プラハ市電のタトラT3SUCS形です。
タトラT3はチェコのCKDタトラ社で製造された路面電車「タトラカー」の3代目モデルで、1960年から製造されました。
13991両が製造され、路面電車としては世界一の生産数だそうです。
現在も旧東側諸国で多くの車両が活躍しています。

タトラカーは米国PCCカーの技術を採用し、高加減速、低騒音が特徴です。
駆動方式は直角カルダンで、電磁吸着ブレーキが備わります。

運転台は自動車と同じペダル方式となっています。


広島電鉄900型906号です。
鉄道公園整備にあたり、広島電鉄より無償譲渡されました。

東欧と日本の路面電車が並んで展示されています。
どちらの車両とも縁のない第三国の公園で思わぬ光景が出現することになりました。

旧駅舎も保存されています。
日本統治時代の1939年の建築で、末期はソウル市内にありながら無人駅でした。

駅車内は駅の歴史や古い乗車券などが展示されています。
ソウル市内のミニ鉄道博物館と言える公園です。
花郎台鉄道公園(화랑대 철도공원)
ソウル特別市 蘆原区 孔陵洞(孔陵洞)서울특별시 노원구 화랑로 608

続いて地下鉄4号線恵化駅から徒歩10分の「国立こども科学館」の保存車両です。

ソウル市電363号車です。
案内板には市電の概要が解説されていますが、車両についてのデータは無く、年式や製造メーカーは不明です。日本国内で製造されたのでしょうか?

車内です。
きれいな状態ですが、全体が茶系と白色の2色で塗装されており、現役時代の姿とは異なると思われます。

ヒョウキ(햐기)8-28号機です。
762mm軌間用の機関車で、花郎台鉄道公園のヒキ1と同じく、水仁線と水驪線で運転されました。
2両とも科学館の正門前に保存されており、入館しなくとも見学可能です。ただし科学館の閉館時には見学できないものと思われます。
国立こども科学館(국립어린이과학관)
- ソウル市鐘路区臥龍洞2-70

続いて、地下鉄2号線(循環線)の新道林駅から分岐する新亭支線に乗車し、陽川区庁駅で下車しました。
循環線は10両編成でVVVF制御の新しい車両を多く見かけましたが、新亭支線は比較的古い旧2000形チョッパ制御車の6両編成で運行されていました。

陽川区庁駅を地上に上がると「新亭車両基地」が広がっています。
ずらりと並んだ電留線とその上の団地群が都営三田線の西台検車区のようです。

留置線群から見て東側のソウル・ウンジョン小学校の真下に旧型車両の顔が見えました。

ソウル市地下鉄1号線の初代車両1000形です。
旧韓国国鉄(現鉄道公社)の1000形と共通設計の交直流電車で、1974年の1号線開業に合わせて導入されました。
導入当初の編成である6両編成で保存されているそうで、反対側の先頭車は1001号車だそうです。


1号線は日本の技術支援によって建設され、1000形電車も日本国鉄によって設計されました。
103系や301系を彷彿とさせる車両ですが、前述の通り交直流車で、かつ通勤形電車としては不釣り合いとも思えるスペックの高い機器類が多く採用されており、新製費はかなり高額であったと思われます。
1000形はこの編成を含む初期の車両は日本の車両メーカーで製造されましたが、ほどなく韓国国内での生産へ切り替えられました。

中間車の一部ドアがオリジナルでないものに交換されていました。

ソウル地下鉄の旧2000形です。2号線で運用されていました。
保存されているのはトップナンバー編成のうち4両で、1980年の2号線開業に合わせて製造されました。

1000形の流れを汲む抵抗制御車で、日本の電車によく似た機器が並びます。
旧2000形はチョッパ制御にマイナーチェンジされた後期車の一部が現役で運行されていますが、初期に製造された抵抗制御車はすでに引退しています。
なお、1000形、2000形ともに「地下鉄博物館展示予定」「部品取り禁止」との貼り紙がありました。
現在韓国には地下鉄の博物館は存在しませんが、ソウル地下鉄公社には博物館を開業する計画があり、この2編成はそのために保存されているということでしょうか?
新亭車両事業所(신정차량사업소)
地下鉄2号線新亭支線の陽川区庁駅で下車、徒歩10分。①出口を上がり、歩道橋で車両基地の反対側へ渡る。
続いて、国立国立果川科学館へ行くため、首都圏電鉄果川線(地下鉄4号線と直通)の大公園駅で下車しました。

科学館の中庭に5両の車両が展示されてます。

「韓国標準型電車」の試作車です。
VVVFインバータ、ATO(自動列車運転装置)等を搭載し、都市鉄道の標準型とすべく試作された車両とのことです。
しかし訪問時は宇宙船風?に改装されていたようで、事前に他の方のサイトで予習していたのとは全く違う姿でした。

車内も大きく改装されており、3両のうち1両はカフェスペースとなっていました。

ディーゼル機関車の2101号です。
アメリカ製と思われるスタイルです。比較的小型の機関車で、入換用でしょうか?

セマウル号用客車です。装飾は剥がされたのかステンレス地剥き出しです。

Wikipedia/G43
ウィキペディアからの転載ですが、標準型試作車の本来の姿です。
それまで日本の影響が強かった地下鉄車両から脱した韓国独自の車両という点で興味深い車両です。いつか元の姿に復元してくれれば良いのですが…。
国立果川科学館(국립과천과학관)
京畿道果川市果川洞706(경기도 과천시 과천동 706)
再び4号線に乗車し、古桟駅で下車しました。

駅ホームのすぐ下に2両の気動車が保存されています。
また、車両の手前に線路が敷設されていますが、これはかつてこの場所を走っていた旧水仁線の廃線跡です。
旧水仁線は水原〜南仁川間を結んだ韓国最後のナローゲージ路線で、並行する新線の開業によって1995年に廃止となりました。(保存されている車両とは無関係です)

車両はムグンファ号用気動車の9000形(先頭車)と9100形(中間車)です。
元々普通列車に相当するトンイル号用9500・9600形として登場しましたが、トンイル号の廃止によって一部の車両が急行に相当するムグンファ号用に改造されました。
しかしムグンファ号での運用も減少傾向にあるようで、そのためこの2両も廃車になったと思われます。


先頭車の9000形はカフェに、中間車の9100形は工房として利用されていました。

せっかくなのでコーヒーとケーキをいただきました。
在来線でも標準軌の韓国の車両だけあって、鉄道車両の再利用であることを感じさせない余裕がある空間です。
(訪問:2019年10月)
〜続きます〜
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広電900形は好きな車両だからコロナ終わったら見に行こ〜